2003/12/18 UP
 
ジャズ・ピアニスト、白崎彩子さん
8月にはデビューアルバム『EXISTENCE』をリリース。
9月〜10月にかけて行った発売記念日本ツアーも大成功に終わり、11月末にはNY『ブルーノート』で自己トリオのライブ。来年の2月からは再び日本でのツアーを控え、今まさに波に乗っているジャズ・ピアニストの白崎彩子さんにインタビュー!

ジャズのメッカ、ハーレムにほど近いモーニングサイドハイツにお住まいの彩子さん。「日本脱出」を決心したとき、その行き先として彩子さんが選んだ場所は・・・
  「やっぱりニューヨークですよね。最初からニューヨークに行きたいという気持ちがあったわけではないのですが、日本を離れてもう少し自分の時間を持とうと思ったときに、思い浮かんだ場所がニューヨークでした。やっぱりジャズの本場ですし、もし行くとすればニューヨークじゃないと意味がないと思いました。ジャズピアノを始めたのは父親の影響もあったのですが、大学生の頃から父に『ボストンにあるバークリー音楽院にでも行って勉強したら』とはっぱをかけられていて、ただその頃はあんまりボストンにも海外にも興味がなかったんです。そして日本で大学を卒業して、ピアノ講師や演奏の仕事を始めました。その頃はとにかく忙しくて、何年かそういう生活を続けているうちに、なんかもうせっぱつまってきてしまって。それでニューヨーク行きを決めたんです。なので私の場合、ニューヨークに行きたかったというよりは、日本から抜け出したいというのがきっかけでした。それまでずっと両親と同居してたので、1人暮らしをしてみたいというのもあったかもしれません(笑)」
そして1997年にニューヨークへ。まずは語学学校に通って英語を勉強。それからジャズ科としてはニューヨークで最も有名なマンハッタン音楽院Manhattan School of Music)の大学院へ奨学生として入学した。彩子さんは、日本でも5歳からクラシックピアノ、そして10歳からジャズピアノを始め、都立芸術高校を経て東京芸術大学音楽学部ピアノ科を卒業。数々のジャズオーディションや、コンテストに入賞・優勝してきた。そんな学歴・経験ともに完璧とも思える彩子さんが改めて学校へ行こうと思ったきっかけは・・・
「語学学校に行って英語を勉強したものの、やっぱり言葉の壁が大きく感じたのと、演奏のほうも思うように活動できなくて、最初の何ヶ月かは結構落ち込んでしまっていたんです。それでもう一度学校に行って音楽の勉強をしようと思いました。英語という言葉の壁があっても、音楽の世界なら小さい頃からずっとやってきているし、言葉の壁も乗り越えられると思ったのかもしれません。マンハッタンでジャズ科のある学校は、他にニュースクール(New School)やシティーカレッジ(City College)などがあるのですが、マンハッタン音楽院に行くことに決めたのは、夫がそこの卒業生で前から勧めてくれていたこともあります。彼もミュージシャンなんですよ」
外国に移り住んだことのある人なら、誰でも一度は言葉の問題に直面したことがあるのではないだろうか。いくら他にやりたいことがあってニューヨークにやってきたとしても、まず最初のハードルは英語の壁かもしれない。もう一度、本来の自分のやりたいことである音楽を勉強しようと思い立って音楽院に入学、そして2001年5月には首席で卒業した彩子さん。大学院生としての生活はどうだったのだろう・・  
「大学院といっても学生はまだ20代前半の若い人ばかりで、最初は年の差を感じてしまいました(笑)。でも今振り返ってみると、若い有望なミュージシャンの方たちとつきあう機会ができたことは自分にとってすごくよかったと思います。生徒には白人の男の子が多かったのですが、ジャズ科の生徒の質はわりと高くて、全米でトップクラスのビッグバンドを持つハイスクールから抜擢されてやってきたホーン奏者など、全米から才能のあるミュージシャンが集まってきていました。もちろんカリキュラムも充実していて学ぶことも多かったのですが、なんと言っても私にとってはそこで講師をしていたケニー・バロン(Kenny Barron)に出会えたことが重要でした。彼はジャズピアニストの巨匠のひとりで、ニューヨークのジャズ界で最も忙しいピアニストとも呼ばれている人です。ここで彼と知り合い、プライベート・レッスンを受けることができたことが一番の収穫だったと思います。8月にリリースしたアルバムにドラマーとしてあのルイス・ナッシュに参加してもらえたのも、実はケニーの紹介があったからなんです」
デビューアルバムとなったCDのタイトルは「EXISTENCE(イグジスタンス)」。直訳すると「存在」という意味の「イグジスタンス」。少し哲学的な雰囲気を感じるタイトルだが、このアルバムには何か特別な思い入れがあるのでしょうか・・  
「実は母が2年前にガンのため亡くなったのですが、その頃母のそばにいるために一時帰国していました。その時に、いろいろとまわりの人の存在や自分の存在、人間そのものの存在について考える時間があったんです。それからニューヨークに戻り、CDを出すお話をいただいて、出すなら今しかないと思い立って制作に取り掛かることにしました。いまは結構なよなよとした音楽が多いので、それに特に女性のミュージシャンだとやわらかい印象がどうしても強いので、ちょっと力強い印象のものを作りたいと考えていて、それで「存在(EXISTENCE)」というタイトルにしようと決めました。母は人に優しくても芯が強い人でしたし、その母との思い出と、母の死に直面して考えていた人の存在というもの、そして自分もこの辺で自分の存在というものをアピールしてみよう、という気持ちが込められています」
「知的でエレガントな奏法と驚異のテクニック!」というカバーコピーのアルバムには、彼女自身が作曲した曲が6曲収録されている。実際に曲を聴いてみると、繊細さの影にまぎれもない力強さを感じる。まさにその存在を誇示しているかのよう。このアルバムの日本発売記念ツアーは大成功に終わり、CDの売れ行きも好調なよう。日本では12歳でジャズクラブに初出演して以来、ファンもたくさんいて、毎回帰国ツアーの度に大盛況なのだそうだ。ニューヨークではクラブやカフェなどでの地道な活動が多いとのこと、日本のファンが恋しくなることはありますか・・  
「そうですね、日本ではファンの方もそうですが、まわりの方にもいつも演奏を誉めていただいて、仕事を頂くのはさほど大変ではありません。ギャラも ニューヨークに比べたら安定していますしね。ただ、やっぱりそれだと生ぬるいというか、甘やかされているような気がしてしまうんです。ニューヨークだと、ミュージシャンの数も多いですし、その分競争も激しく、すごくシビアな世界です。もちろん傷つくこともありますが、でも音楽をやるからにはハングリー精神というかそういうのも必要なのかなと思っています。単につらいのが好きなのかもしれませんが(笑)・・。日本の人付き合いの良さが恋しくなることもありますが、やっぱり音楽をやる上ではニューヨークにいて刺激を受けたほうがいいのかなと思います。ニューヨークで活動しているとお客さんの反応もストレートですし、いろんな有名な方の演奏を聴く機会や共演する機会も多くなりますし、そういう環境に自分をおくということも大切ですよね」
日本では5歳からピアノを始め、ピアニストでは最年少の14歳でラジオ番組「NHKセッション」に出演するなど、天才ジャズ・ピアニストと呼ばれてきた彩子さん。ニューヨークに渡ってからは地道に活動を続けてきたが、11月30日に行われた「ブルーノート」での公演も好評に終わり、ニューヨークでもその「存在」が確実に表れてきているようす。今後の目標は・・
「ニューヨークでの6年間の沈黙を破って、そろそろ本格的に活動しようと考えています。ニューヨークでもアルバムを出そうと思っていますし、2枚目のリリースも考えています。2月にはまた日本でのツアーが控えているのですが、ニューヨークでもリーダーの私がもっと積極的に売り込んでいっていろんなところで演奏したいなと思っています。とにかくたくさん演奏することが一番重要だと思うんです。あと、個人的にはもっと有名な人、うまい人と演奏したいなと思っています。やっぱり一流の人はすごいです。ぜんぜんインスピレーションが違う気がします。自分よりもうまい人と一緒に演奏してより自分を高めていきたいです」
最後に読者の方へメッセージをいただけますか・・  
「音楽を目指している方でも他のことでもそうですが、なんでも自分で行動を起こさないとダメだと思います。『Make it happen!』という言葉があるのですが、最近つくづくなるほどなと思っています。待っていても何も起こらない。自分で行動を起こすことが大切なんだと実感しています」
(Text: HINA)  
NYのこと質問!
NYに来たきっかけは?
「日本にいたころは毎日ほんとうに忙しい日々を送っていて、ある日『このままではいけない』と思い立って、日本を脱出することに。行き先はもちろんジャズの本場、ニューヨークでした」

NYで活動していて感じたこと
「NYは人間も多いし、とにかくいろんな考えの人がいると実感させられます。その中でやっぱりミュージシャンとして自己主張しないといけない場合など、意見の違いから大げんかになることもあります。そうしたぶつかり合いは日本と比べてNYのほうが断然多いですね。その反面、大学のクラスで出会った若い人たちや、60代70代の熟年プレーヤーたちと、年齢にとらわれずに気軽に演奏できる環境がNYにはあって、その辺はさすがアメリカだなあと感心させられます」

NYでお気に入りの場所!
「アッパーウエストサイドの雰囲気がどこか庶民的でとても気に入ってます。86丁目から72丁目の間をブラブラお散歩するのが好きなんです。『Fairway』というグロサリーストアは2階にオーガニックのコーナーもあってお薦めです。あと、日本のパンならイーストビレッジの『Panya』のパンがおいしいですよ」

FAIRWAY
2127 Broadway
(Bet 74th and 75th St)

212-595-1888
Hours: 6AM-1AM
fairwaymarket.com

PANYA
10 Stuyvesant St
(3rd Ave& 9th St)
212-777-1930

彩子さんにとってNYとは?
「私のNYの印象は、奥が深くてまるで大海原のようなところといった感じです。さまざまな人種の人、いろんな性格の人がいて、音楽でもなんでもジャンルも多いですし、わからないことだらけだからかもしれません」
Ayako Shirasaki
Contact Info
Ayako Shirasaki
Website:
www.ayakoshirasaki.com
Email:
blackcatmusic@hotmail.com
CD "EXISTENCE"
『EXISTENCE』 好評発売中
2003年8月20日 発売
What's New Records (WNCJ-2124) / \2800 (税込み)
購入方法
日本: amazon.co.jp
または、彩子さんのサイトから直接ご購入いただけます。
米国:
米国内では未発売ですが、彩子さんのサイトから直接ご購入いただくか、amazon.co.jpから海外発送も可能です。(発送料+手数料:900円)
*彩子さんのサイトで曲の解説を読むことができるほか、試聴もできます。
NY JAPANESE トップ Ayako Shirasaki ライブ情報
 
 
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